なくなったものは戻らない。至極当たり前のことである。
だから朝起きてスマホを手に取り、動画アプリをタップしただけで、今日は時間がなくなることが確定した。せっかくの休みの日なのに。
本当は買い物に行きたかった。部屋の掃除と服の断捨離をしてクローゼットを整理したかった。その後本も読みたかったし、ゲームも進めたかった。何なら新しく買ったCDを取り込みたかったし、小説の設定を考えてプロットを仕上げるくらいまでやりたかった。
スクロールしようとした手を止める。慌ててロック画面表示にすると、時刻は十七時を回っていた。ベッドの上に仰向けで寝転がり、天井を見上げる。目がチカチカするのと、目の奥に少し痛みが走る。
やってしまった。何一つしていない。
そっと目を閉じると、睡魔が襲ってくる。こんな時間に寝ると夜眠れなくなるからあまり好きじゃない。でもあまりにも強烈な眠気で抗うことができなかった。あっという間に意識を手放した。
今年に入って三十回くらい繰り返しているが、これからの人生で動画視聴に費やした時間は戻ってくるだろうか。
『失われた時間』
5/13/2024, 3:36:41 PM