YUYA

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『空を落とした鏡』


誰かが落とした
空のかけら

それは 舗道の隅に眠る
割れそうな鏡
青い羽をまとったまま
地上で息をひそめていた

雲は 綿菓子のように溶け
風は 秘密をささやいては
水面にひとしずく
魔法を落としていく

そこに映るのは 
天ではなく 想いのかたち
忘れられた祈りや
誰にも言えなかった夢が
ゆらりと波紋を描いて漂っている

わたしはそれを
飲み水のように見つめていた

踏みこめば壊れる
触れれば消える
それでも、確かにそこに在る

小さな水溜まりは
空が地上に残した、
ひと夜のまぼろし

風がやめば 
光が満ちて
その鏡は 
静かに 空へと戻っていった

6/5/2025, 11:04:32 PM