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最初に出会ったあの日のこと
正確にはもう思い出せない
けれど あなたの笑い声だけが
今も耳の奥で 揺れている

コーヒーは相変わらず ミルク多め
洗濯物のたたみ方も いつも適当
それにいちいち 小言を言ってた
あの頃の私も たしかに私だった

何年も同じ食卓で
同じニュースを見ながら
時に 言葉少なに
でも隣にいることが あたり前になった

恋だったのか
愛だったのか
それともただ
習慣という名前の 優しい牢屋だったのか

ふと あなたの寝息を聞きながら
胸の奥に 小さな問いが灯る
「この人を もう一度 好きになれるだろうか」

答えは出ない
けれど 今日もお弁当を作る手を止めずに
あなたの苦手なピーマンを そっと外す

たぶん 恋じゃない
でも 嫌いじゃない
むしろ
この静かな時間こそが 愛の形なのかもしれない

倦怠とは 終わりではなく
ひとつの通過点
すれ違いも 沈黙も
すべてを抱えて 今日を越えていく

恋か、愛か、それとも――
答えは きっと
この毎日の中に
静かに 潜んでいる

6/4/2025, 10:36:32 AM