甘々にすっ転べ

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#冬は一緒に

自分なりに精一杯やったと自負している
最中に、このままではきっと望む結果は得られないだろうと分かっていても。

努力する事には価値が有る、今年だけじゃない。
来年また挑めば良い。
その糧になる様に、望む結果を得られなくてもギリギリ指先が掠められる所まで距離を縮められる様、手を尽くした。

一番の敵は精神不安

例えるなら。
寒い中震える手でペンを握り続ける様なもの。
勿論、暖かい日もある。
だからこそ凍える様な日も。

かじかむ指は先端から痛みを伝え、背中をゾゾゾと冷たい風が舐め、身体の動きを鈍らせる。

それでも無視し、ペンを握りページを捲るが。

そんな事何時迄もは続けられない。
強張った手指は暖めないと使えない。
換えも利かない道具だ。

そんな寒々しい日ばかりでは無かった。
嵐の様に慌ただしい日も、しとしと雨降る穏やかな日も有った。
カラッと晴れた日なんかは勉強も捗った。

人より多いか少ないかは問題ではなく。
ただ、凍える日にはそれ用の対応をした。

それだけの事。

もしもっと晴れた日が続いたなら
嵐に見舞われたりしなければ
欲しい結果が得られたかも知れない。

あとほんの少しの所だった
欲しかった物が指先を掠めた感触すら有った
だが、結果は予想通り。

「寒い日が続いている、」

そう話してその意味が本当に理解出来る者は、
此処には居ない

何故か。

「寒い日が続いている、」

「暖房点けないからよ。」


ーーその通りだ。
貴女はよく寒い々と火に当たっている


「寒い日が続いている、」

「気のせいだろ、お前が寒がりなんだ」


ーーその様だ。
貴方は何故そんな薄着なんだ



今年も仕事に明け暮れる
遠い薬指の人にも同じ事を言う。

「寒い日が続いている、」

そのひとは言う。



「此処、あったかいよ」

暖房を点け若干の薄着でそんな事を言う
画像越しではどう見ても寒そうに見える

嗚呼、なるほど
次々添付される画像は、あちこちにカイロを貼り、コタツの様に暖かいらしい靴下を履き、薄着の下を捲ると腹巻きが有った

「温そうだ。」

お陰で、こちらも
かじかむ指が解けてきた様な気がする

側には居てやれもしないくせに、そんな事で助けられてばかり居る。

そうだ。
耳当てでも送ってやろう
ふわふわの茶色いのが良い

代わりに画像を一枚送って欲しい
ふわふわの茶色い耳当てをした姿を。

そしたらきっと寒い日も、乗り越えられる。

冬はまだ続く。
側には居られなくとも、
せめて冬の過ごし方を共有しても良いだろうか

「わかった、耳当てと自分の分のジャケットも買う。買うから、写真送ってくれるか」

何故バレた。
どうせ冬は寒いものだ、と疎かにしていた防寒具を新調する事になった。

自分の為に金を掛ける意味が分からないが、そう叱られると無視出来ない。

「晩飯は、」

飯もどうでもいい。
側に居てくれないと、作る楽しみすら見出せない。

「雑炊、でもいいか」

こんな寒い夜に強請られて、仕方なく台所に向かう。
画像越しで食えもしないのに、作って写真を撮ってやる。

それを見ながら今、のり弁を食っているらしい。
こちらは、食べる予定の無かった雑炊を食う。

「…うまい、」


自分の飯の味には自信が有る

それより自信有り気に画面の向こうからメッセージが飛んでくる。

どうでも良かった筈の飯が、身に沁みて美味い

暖かくなったか、とメッセージが聞いて来る。


「ああ。お陰で随分と温い。」


舌を火傷する程で、乗せた梅干しがその舌先にビリッと染みたが内緒にしておこう。

格好が着かないだろ。




















12/18/2024, 12:13:09 PM