三波

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【閉ざされた日記】
古びた舘。昔はたくさんの人が住んでいたらしいが、それは遠く昔の話だ。
とても優しい旦那さんと、美しい奥さん。それに、可愛らしいお子さんもいた。幸せそうな家庭だった。
でも、ある事件がその館で起こったせいでどこか遠くへ行ってしまった。

俺は幽霊だ。ずっと、あの家族が来る前からずっとここにいる。未練があるからここに留まっているということは分かるのに、皮肉なことに他の情報は全く覚えていない。なにか、なにか大切なことを忘れているような気がするけれど。
俺の前には今日記がある。閉ざされた、日記。
奥さんが書いていたような、そんな気がする。
鍵はないから開けないけれど、そこに、俺の何か大切なことが、書いてある気がする。

わからない。俺の記憶は閉ざされている。
まず、なんで死んだのかもよく分からない。
まぁ、そんなことを知ったところでもう何も出来ないけど。
知りたい。ただそれだけ。

あの家族が居なくなったあと、少しの間は人が来ていた。
そのもう少しあとには俺の噂を聞きつけてか心霊スポットとして多くの人が来た。結局見れなかったみたいだけど。
最近はめっきり人が来ない。館はくちていくばかり。
とても綺麗だった室内も、庭も、古ぼけて雑草ばかりになってしまった。

俺はもう成仏はできなさそうだ。
俺はこの家に記憶とともに閉ざされている。
まるで、あの日記のように。

1/18/2026, 10:20:21 PM