酒が入った席の後に誘い、誘われるがまま一人でふらふらとやってきたのが彼との最初だった。誘っておいて言うことではないが、あまりにも簡単に掛かったから少し心配したものだ。それはある意味杞憂だった。この家で自由に過ごしながらも、常にこちらのことを見ているのだ。少しでも隙を、あるいは牙を見せれば蹴飛ばしてでも出て行きそうな、そんな気配がいつも彼にある。ひらひらとした翅の下に針が仕込まれている。気づいた瞬間、刺し貫かれてでも手の中に収めたいと思った。だから逃げられぬよう、慎重に。口実をいくつも拵えて通話をタップする。今宵もこの家に蝶を呼ぶ。
(題:モンシロチョウ)
5/11/2024, 9:34:25 AM