堕なの。

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◤してはいけない約束をした◢

優しい人だ。昔も、今も。傍に居ると、私だけが汚れているように感じてしまう。今だって、悲しげな瞳を浮かべる君は、一度も私を否定しなかった。

「優しすぎるから別れたいの」

こんな馬鹿げた一言を、真剣に受けとってくれる。こんな人を手放して、多分私は幸せになれない。それでも、彼の傍に居るべき人間が私でないことくらいは分かる。もっと、可愛くて、心の綺麗な子が居るべきだと。

「分かった」

長い沈黙の後、告げられたのは肯定の言葉。否定できないのは怖いからだと彼は言ったけれど、それでも私はやっぱり優しさの証だと思う。

「じゃあ、またいつか会ったらそのときは初めましてから始めましょう」
「ああ、また会おう」

ドラマやアニメなら、こんな形で終わったカップルが出会うことは二度とないのだろうか。いや、フィクションなのだから希望を持たせる形で終わらせるのだろう。でも、ここは現実だ。

「さようなら、もう二度と会わない人」

心の中で呟いて、その場所を後にした。彼の顔を見てしまわないようにしながら。


テーマ:また会いましょう

11/13/2023, 11:21:10 AM