ある日、私がひまわり畑の中を歩いているとボロボロの兵隊に出会った。彼は銃を構えようとしたが、力が入らなかったのかそのまま崩れ落ちてしまった。恐怖心を押し殺して慌てて駆け寄ると、かすれた声で水を求めていた。わずかに逡巡したが私は持っていた水袋を彼に渡した。水を飲みこちらに敵意がないと分かったのか、彼はポツリポツリと身の上を語ってくれた。
彼は戦場へ向かう途中だったそうだ。しかし、途中で死ぬことが恐ろしくなり、霧が出たのに乗じて行軍中の部隊から逃げ出したとのことだった。ただひたすらに逃げ続け、眠ることもできず、ふらふらになっていた時に、身を隠すことができそうなこのひまわり畑を見つけることができて幸運だったと。そこまで話して彼はふと疑問に思ったのか尋ねてきた。「ここはどこなのか。」と。私は少々逡巡したが事実を告げた。「そうか。」とつぶやいた彼の顔は絶望に沈んでいるように見えた。彼は私に感謝を述べた後、奥へと消えていった。私は止めなかった。いや止められなかった。数分後銃声が響いた。私は十字を切った。せめて花畑の中で命を絶った彼の死後が安らかなものであるように、と。
9/17/2024, 2:15:16 PM