落ち葉の道 時を紡ぐ糸 心の深呼吸 霜降る朝 失われた響き 君と紡ぐ物語 凍てつく星空 贈り物の中身 冬の足音 です。
落ち葉の道
天気の良い休日。運動不足解消も兼ねて、キミと歩いて近くの店に買い物に行くことにした。
「歩いてるから寒さは感じないけど、風が少し冷たいね」
「そうだね。冬が近づいてるんだね」
店までの道を、のんびり歩いていると
「見てみて。落ち葉の道ができてる」
キミが指差す方向に目を向けると、落ち葉が歩道に敷き詰められていた。
「せっかくだし、落ち葉の道歩こうよ。落ち葉の音、今の時期しか聞けないし」
「わかった。じゃあ、そっちから行こう」
今歩いている道から落ち葉の道に移動し、落ち葉の道を歩き始める。
「ガサガサの大合唱だね」
落ち葉の音を聞きながら、楽しい気持ちで店に向かうのだった。
時を繋ぐ糸
いつも乗る電車にいるキミ。
乗るのは僕の方が後だけど、同じ車両に乗り、降りるのは同じ駅。
「気になってはいるんだけど、声をかけたら、変な人だと思われるかな」
他の乗客とは違い、立っていても座っていても本を読んでいるキミ。キミ自身にも、何を読んでいるのかも気になっていた。
「よし、声をかけてみよう」
毎日、声をかけるかやめるかを自問自答してきた。ずっと悩んでいるくらいなら、声をかけよう。そう思い
「何の本を読んでいるんですか?」
思い切って声をかけると
「推理小説です。この作家さん、大好きで」
と、ブックカバーを外し表紙を見せてくれる。
「そうなんですね。どんなところが好きなんですか?」
声をかけたことで話が盛り上がり、電車を降りるまで楽しく会話できた。
「突然声をかけてすみませんでした。前から気になっていて」
電車を降り、改札まで歩きながらそう言うと
「いえ。大好きな作家さんを他の人にも知ってほしくて、聞かれたら答えることにしてるんです」
ニコニコ笑う。
「今度読んでみたいので、おすすめのタイトルを教えていただけますか?」
「もちろんです」
時を繋ぐ糸に導かれ、出会ったキミとの縁。大切に育めれば。と思うのだった。
心の深呼吸
「なんで、うまくいかないんだ」
何度も、書いては消し、書いては消しを繰り返す。
上司に任された仕事。書いた企画書をチェックしてもらうけど、良い返事がもらえない。
「どうしたら…」
考えても答えが出ず頭を抱えていると、ポンと肩を叩かれる、
「ん?」
振り向くと、企画をチェックしてくれている上司が立っていた。
「す、すみません。良い案が浮かばなくて」
姿勢を正し、上司に頭を下げると
「そんなに思い詰めないで、心の深呼吸をしてごらん」
企画書をチェックしているときとは違い、優しい声で言われる。
「心の深呼吸…ですか?」
「そう。肩肘張らずに心の深呼吸してリラックスしてから考えてごらん。大丈夫、君ならできる。できるとわかっているから、君に頼んだんだから」
にこっと笑われ
「ありがとうございます」
肩の力が抜けたのを感じる。
それからの僕は、仕事に行き詰まるとこのときの上司の言葉を思い出し、リラックスして仕事に臨むことができるようになったのでした。
霜降る朝
「はー、寒い」
目が覚め、リビングに行くと、凍えるような寒さが待っていた。
「すっごい冷え込んでる」
急いで暖房のスイッチを入れ、温風が出てくるのを待つ。
「こんなとき、1人じゃなかったら、もう少し温かい気持ちになるのかな」
心まで凍えそうな霜降る朝。早く彼女がほしいなぁ。とため息を吐いたのだった。
失われた響き
「ガシャーン」
部屋中に、大きな音が響き渡る。
「何だ、何の音だ?」
急いで音がした方に向かうと
「あ…」
戸棚に置いていたオルゴールが床に落ち、破片がちらばっていた。
「あぁー」
落としたと思われる猫は、素知らぬ顔で顔を洗っている。
「あーあ」
ため息を吐きながら、壊れたオルゴールを片付けると猫を抱き上げる。
「ケガしなかった?」
足を丹念に調べるも、破片は刺さっていない。
「ま、あんなとこに置いた自分も悪いしね」
オルゴールが壊れたことで失われた響き。愛する猫のかわいい響きまで失わなくて良かった。と思うのだった。
君と紡ぐ物語
「おめでとう」
親しい人たちに囲まれ、笑顔があふれる結婚式。
「幸せになろうね」
「うん」
もちろん、主役である僕たちも、幸せで満たされ、笑顔の花が咲いている。
ここから始まる、君と紡ぐ物語。幸せで楽しいことばかりじゃないだろう。けど、先のことを心配するより、今は、2人きりの生活を全力で楽しもうと思うのだった。
凍てつく星空
キミと一緒に、凍てつく星空を眺める。
「寒いねー」
「吐く息が真っ白だよ」
厚着をしていても寒さが身に沁みる。それでも星空を見上げるのは、流星群が見れると聞いたから。
「楽しみだね」
「だねー」
流星が流れ始めるまで、少しでも寒さを凌げるよう、キミの手を握ったのだった。
贈り物の中身
単身赴任している僕のところに、キミから届いた贈り物。
「何だろう?」
紙袋を開けると、入っていたのはマフラーと手袋。それと、手紙で。
「手紙?」
手紙を開くと
「こっちと違って、あなたがいるところは、これから寒くなるでしょ?風邪を引かないように使ってください」
そう書いてあった。
「…有り難いな」
キミから届いた贈り物の中身。
それは、僕を気遣う優しさで溢れていたのでした。
冬の足音
12月に近づくにつれ、聞こえてくる冬の足音。
吹いてくる風が冷たくなったり、木々の葉がキレイに色づいたり、いろいろと感じられる。
「寒いのはイヤだな」
冬の楽しみが、ないことはないけれど、でも、やっぱり寒いのは…。
「…春、早く来ないかな」
冬の足音を感じながら、春の訪れを首を長くして待つのだった。
12/4/2025, 7:41:04 AM