ほろ

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「寒い!」
「言うなよー。寒くなるだろー」
後輩が大声で叫ぶものだから、思わずその丸い頭を叩いてしまう。
後輩はパッとこちらを振り仰ぐ。赤い鼻と、白い息。
「先輩! 叩かないでください!」
「んー、ごめん」
「それと、寒いものは寒いんです! 身体めちゃくちゃ冷えてるんです!」
紺色のコートに白のマフラー、もこもこの手袋まで装備しているのに、後輩は犬のように叫ぶ。
はいはい、と言いつつ、俺もすん、と鼻を鳴らす。寒さが身に染みてきた。
「さみ」
「あっ、ちょっと先輩!」
後輩に乗っかる。あんなに身体が冷えてると言っていた割には、ちょっとばかしぬくい。
「は、な、れ、て、く、だ、さ、いー!!」
「そんなつれないこと言うなって……お前ぬくいんだよ。あと柚子の香り。俺好き」
「何言ってんですか!」
後輩の右ストレートが腹に入る。くの字に折れ曲がっている間に、後輩は俺の手からすり抜けていった。
「さっさとコンビニ行きますよ!」
「はいはい」
叫ぶ後輩の、頬まで赤くなっている。
さらに寒くなったかな。コートに手を突っ込んで、後輩を追いかけた。

1/11/2024, 1:45:54 PM