永遠の花束
「今回もまたダメだった」
机の上に置かれた鉢には、土だけが残されていた。つい先日まで植物があったのに。芽が出て喜んでいたのに。息子はただ呆然と立ち尽くしていた。
「これで満足よ」
私は手に持っていたものを見せた。永遠の花束。この中にある花は自由に選ぶことができ、また枯れることもない。息子が初任給で贈ったくれたものだ。
「そんなの、所詮作り物じゃんか。本物の花を、かあさんに」
「あなたもわかっているでしょ?」
この地下世界では植物が育たないこと。
地上は温暖化の影響でとても人間が住めないこと。
そして私の命が永くないこと。
「けど、そうだね」
この言葉を告げれば、息子を縛る気がした。
これからの人生をすべて捧げる気がした。
それでも、あまりに悔しそうで。
私を、母を忘れて欲しくなくて。
「いつか本物の花を見せてちょうだい」
2/4/2025, 8:16:02 PM