川柳えむ

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「姫は私のだ!」
「いや、俺のものだ!」
 私はこの国のお姫様。
 今、私を取り合って、隣国の王子達が争っている。お城の外でバッタリと二人に出くわし、こうなってしまった。
 わかってる。私が美しいのがいけないんだって。私は間違いなくこの物語のヒロイン!
「私の為に争うのはやめてー!」
 止めに入ってみるが、一向に止む気配はない。
 そして、それはそのうち殴り合いの喧嘩にまで発展してしまった。
 どうしよう……。
 それは結局、二人の気の済むまで行われることになった。
 殴り合いに疲れ、倒れ込む二人。
「はぁ……やるじゃないか、おまえ……」
「そっちこそ……」
 沈んでいく夕日が二人を照らす。
 お互いに支え合い、立ち上がる。夕日を背に、二人は熱い握手を交わした。
「まさかここまでやるとはね……気に入ったよ。どうだ? これから一緒に食事でも」
「いいね。俺もおまえの話を聞いてみたい」
 そして、二人はそのまま夕日に溶けるように、行ってしまった。私を置いて……。
「って、ねぇ! 私がヒロインじゃないの!? どういうことなの!? いつの時代の漫画よ!」

 ハッピーエンド♡

「ハッピーエンドじゃないわよ!」


『沈む夕日』

4/8/2024, 7:37:33 AM