とん、たん、ひとけのない街灯の下に足音が響く。
ととん、たん、ふわり。白いスカートがオレンジ色に照らされて揺れる。細い腕を伸ばして羽ばたくように下ろす。右足を軸にしてくるりと回り、軽やかに裾をはためかせる。
深夜二時。コンクリートの地面にぽつりとたった一本の街灯の下で、その子は踊っていた。青い柱の街灯はあまり光が強くないようで、灯っていてもどこか心許ない。辛うじて灯りが届く古びたベンチに落ちる影はどこまでも暗く、まるで深淵がこちらを覗き込んでいるようだった。
ジジ、ぱちぱち、プツ、カンカン。電灯は古いのか、時たま音を静かに響かせる。それは時にあの足音と絡み合い、不思議なメロディーを奏でていく。
暫くして目が慣れれば、色々なものが見えてくる。
赤い自転車。小さな花壇。遠くに見える小さな明かり。
どこかの窓の、どこかの家の、まだ眠らない人の営み。
とん、たん、ぱちぱち、たたん。
軽い音と、古い音が重なっては離れていく。
――夜が、いっそう更けてゆく。
「あかり」
7/8/2024, 2:54:56 PM