そっと
黒い子猫が足を引きずりながら餌場に来ると連絡を受けたのは、金曜日の夜8時頃だった。雪が降るほどではないが、夜になれば気温も昼間より5〜6℃下がり体が芯から冷えてくる。
そんな寒い夜にケガをした子猫がいる。連絡を受けてすぐに捕獲器を2個抱え、餌場に向かった。寒いだろう。寂しいだろう。足が痛いだろう。早く保護しないと命があ危ない。いても立ってもいられなかった。
餌場についてすぐに捕獲器をセットする。今夜、黒の子猫は餌場に来てくれるだろうか。待つ。ただただ子猫がくるのを物かげから待つ。長い時間だ。風が強い。寒い。でも子猫を保護するまではここを動く訳にはいかない。
でも、その日は子猫は現れなかった。
何日か同じ餌場に通ったが、黒の子猫にあうことは叶わず、もう死んでしまったのかと諦めてかけた頃、ボランティアの餌やりさんから電話があった。
「あの餌場に足を引きずった黒い子猫がいる。」
捕獲器を引っつかみ車に乗る。車で10分ほどのところにあの餌場はあるが、道が混んでいてなかなか進めない。こんな時に限ってついていない。
やっと餌場に着き、餌やりさんと合流。
餌やりさんがさし指す方向に目を向けると
確かに黒い子猫がいた。いた〜。
捕獲器を子猫が通りそうな所にセットして、私は身を隠す。もうあとは持久戦だ。
捕獲器に子猫が入るのを祈るだけ。
餌に釣られて黒い子猫が捕獲器に近づいてくる。足を引きづっているので歩みは遅い。私は息を殺し「もう少し。もう少し。」と黒い子猫の背中を押している気持ちだった。
ガシャン。ガシャン。
入った。捕獲器できた。
捕獲器のなかを覗けば、黒い子猫がシャー、シャーと威嚇を繰り返していた。
人にケガをさせられたのかもしれない。人を怖がっている感じがする。
捕獲器を持ち上げ家路を急ぐ。今日は動物病院が終わってしまったから、明日の朝一で予約をしょう。
今日はこのまま捕獲器のなかで休んでもらおう。そっと捕獲器に毛布をかけ中を暗くする。暗くなることで子猫が少しでもおちけばいいと思っている。
私は保護した猫が人に慣れるまで預かるボランティアをしている。この黒い子猫もケガが治って落ち着いたら、きっと良い飼い主さんが見つかる。それまでは全力でサポートすからよろしくね。
そっと毛布を持ち上げてみれば、捕獲器の中で黒い子猫がスヤスヤと寝ていた。
かわいいなあ〜。
1/14/2025, 11:12:14 AM