komaikaya

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『ぬくもりの記憶』


★作戦報告その1:

 自販機でホットの缶コーヒーを買って、コートのポケットにそれを入れてから、「こうすればあったかいだろ?」と彼女の手を握って、諸共にポケットに突っ込んでやった。

 が、缶コーヒーが意外に熱すぎたせいで、早々に手があったまってしまい、繋いだ手は早々に解散……ってかそれは、まだ俺にあんま慣れてない彼女が、照れまくってたせいもあるのだが……可愛かったけど……クッソー。

 あと、余裕なくて適当に選んだせいで、苦手なブラックを処理する羽目になった。いや、飲まずに捨てるのは、もったいないだろ?



★作戦報告その2:

 奴は普段、独り寝だからね。ちょうど寒くなってきたし、一度人肌の心地良さを知っちゃえば、そっからチョロいんじゃね?
 ってことで、押しかけ一泊からの、添い寝作戦、決行!

「っあ? 冷てぇよ! お前、体温低すぎ……あーもーしょーがねーなー、毛布もう一枚巻いてやって、ああ、明日は肉食いに行くぞ、どうせロクなモン食ってねぇんだろ? それと湯船は必須……は? シャワーのみの湯船ナシ物件だとぅ? 上等だコラ、ウチの湯船で茹で上げてやるから、泊まる準備してこい!」

 ……えーと。
 オレってそんなに、冷たい男だったの?
 まぁでも……作戦成功、かなぁ?



★作戦報告その3:

 ふあ〜っ! 「こうすればあったかいだろ?」からの、繋いだ手をポケットにイン! なんて、こんなキュンな状況下でわたしってば……なんで、手汗?!

 そろそろ彼と手を繋いだりなんかするかもしれない→いやでも冷え性でヒエヒエな手を握らせて彼に冷たい思いをさせるわけにはいかん→そうだカイロであっためておけばオケ! って作戦だったから、でも事前にあっためすぎた!

 あと、この冷え性なカラダの血行が良かったのも計算外、いやーだってもう、隣りに並んでるだけで動悸が……でもさぁ、なにも手汗までかかなくたって!

 それで! 「あっ、もうあったまったよね?」って早々に手離しちゃったのって、わたし、感じ悪かったかなっ泣? ってか、もっとずっと繋いでたかったのにー! 手汗のバカーっ!



★作戦報告その4:

 奴は普段、独り寝だから。ちょうど寒くなってきたし、一度人肌の心地良さを教えてやれば、そっからチョロいんじゃねえの?

 そういう下心があったことは、重々認める。けど実際に触れてみたら、奴のカラダが冷たすぎて……下心以上に、世話を焼きたくなってしまった。
 で、それで。半ば強引に奴を、俺んちに同居させてみたんだが。

「ベッドが、冷たい……」

 めずらしく奴がまだ帰らない、ベッドの上で。
 俺は無意識に奴の、『ぬくもりの記憶』をたどっている。

 あんな……俺よりも低体温な男の、温度を。
 俺はすっかり、覚えてしまっているのだ。

「案外チョロいな、俺」

 ミイラ取りがミイラに、ってヤツ?
 あーあ、なんかムカつくから……帰ったらまた、毛布でぐるぐる巻いてやろう。もちろん、その前の風呂は必須……風呂沸かし直すか。



12/11/2025, 9:36:09 AM