よあけ。

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お題:意味がないこと

あなたの涙に濡れてみたい。
あなたの涙に溺れたら、僕の心は、
何でもないよ。

君に酷いことを言った
君に酷いことをした
だから
今更

今更 意味がないこと
今更、だから こそ 涙を浴びたい。

喉でもいい 詰まらせて あなたの呼吸 体温

あなたの涙に濡れている。
溺れそうだ、僕の心、冷たいみたいだ、
こうでもしないと

君から顔を逸した
君から隠れた
だから
今更

今更 意味がないこと
今更、だから こそ 眼球を知りたい。

陶酔でいい 流し込んで あなたの血液 細胞

砂糖水 ような 甘い 蛍光灯 反射 煌めく

飲み下す。飲み下す。飲み下して
みて
嗚咽して

今更 意味がないこと

今更、だからこそ、触れたい。

■■

あなたと対話がしたいと思った。

どうしようか。
何がいいかな。
なんでもいいよ。
そうなのかな。
そうずっと、このままずっと、ずっと、ずっと。吊革映る車窓から、このまま広い草原の上、ただずっと。
一人だから、二人だから、ふたりぼっち、一人だけどね。そうなのかな、そうなんだよ。
脳みそ一個、心臓一個、君とおんなじ手と足と口、同じ血が巡ってる。だからずっと、ふたりぼっちの一人で。
で、で、で、なんだっけ。
どうしたい?
どうしようか、わからないな。
ならこのままいよう。このままずっと、のらりゆらりくらりとろんと。次でも、その次でも、ずっと回送でも。
どうしようか。
そうしようか。
ふたりぼっち一人席。あなたと私で。

優しい、穏やかな話がいいかな。ただひたすら花に溺れていたい。そんな柔らかな世界がいい。眉間に皺を寄せるのも、口調が強いのも、攻撃するのも、傷つけるのも、ここではそんなもの要らないよ。毒となるもの欲しいならきっとここでは見つからない。薬となるもの求めているならきっとここでは洗われない。なにも。なにも。

例えば全部「それでいい」と受け入れる心があったとして。さあ、さあ、わかるかい。わからないくせに。わからなくていい。わからなくていい。知らないくせに。知らないでほしい。大事なあなた。名前をあげた大事な大事な。だから知らなくていい。苦痛とは無縁の世界で、輝かしく生きていればと、私のエゴも知らず生きていれば。

枷になって鎖になって繋ぎ止めるものが紅茶という手段で。なんてことないありふれた話題と当たり障りのない世間話だけで。そうしたらあなたは大事にしてくれることも知っていて。私はもう赤子ではないというのに、あなたは抜け落とし甘やかす。そこに漬け込んだとしてもタンニンが落ちすぎることはない。だからずっと紅茶を淹れ続ける。

だからね、だから、だからどうかきちんと対話がしたいと言いたいのだけど、どうもうまく伝えられないみたいだ。あなたはずっと先を見ているから目が合わなくて。引き止める手段は少なく、住所も知らないから、手紙一つ送れやしない。「教えてくれればいいのに」そう言えないのはそこまで未熟じゃないから。

知りすぎてしまったと、そうこぼすのを知っているから。慎ましく生きるのも悪くないよねと言って一人木々の奥を彷徨うし、一人ふらっと空を漂う。好奇心というべきか、恐怖の裏返しか。だからね■さん、そんなに……孤独が好きかい。

窓の鍵を開けておけばいい、そうしたら自由気ままに会える気がする。
サンタクロース気分か、子どもじゃあるまいしプレゼントはないよ。
それじゃあ代わりにミルクを用意しておいてあげる。
それでは何か。
何も、変じゃない、プレゼントなんだから。

私達にとってハグなんて今更意味がないもので。そう、意味がないんだよ。だって同じだから。寂しいことを言っている。だから悲しくもなる。それでもいいとすら思える。それほどまでにハグをしたい。無意味だけれど。

うん、うん。今更、今さら。空白の時間、埋め合わせ?それはいやだな。今がいい。今がいいよ。今更だからこそ今がいいよ。

「また明日ね」だからちゃんと約束守ってよね。「また来年も」だからちゃんと約束だよ、忘れないでね。そんな甘えたことを口にできないから「また明日」「また来年」それだけを言う。そんなふうに隠してる。隠していないと泣きたくなってしまうよ。

大事なリボンほどけ落ちて、大事な帽子も転げ落ちて、大事な心もずり落ちて、それでもなお人間だから、やっぱり体温は必要なんだと思う。

雪の降る日に帰りたくないのはきっと同じ場所で墓を見たくないから。黙ったまま胸を痛める。食いしばって口を閉じる。「代替でもいいよ」。卑屈だからそう言って、驚いた顔してそれもだいたい。

抱きしめてほしいというニュアンスもきっと違う。意味がないことだからしないということまで意味がない。それでもあなたに強請るのは強情だと思うかい。指先一つ、爪だけで幸せ?それで満足?本当に?そんなわけ。だめだね、際限がないよ。

刺すことでしか表せない、伝えられない、そんな不器用なあなたのためには多少の茶目っ気だって必要不可欠。子どもっぽいなあと笑いながら「そんなつもりじゃないよ」と笑えるほどの。あなたが例え常識はずれだとしても「そんなところも素敵さ」と言ってしまえるのは確かに心があるから。刺されたっていい、刺されたならその刃物ごと呑み込んでしまおう。それを知ってか知らずかあなたは何度でも私を突き刺す。あなたはそんなたいへん卑屈で面倒な成分でできている。

あなたと対話がしたい。私の涙を知っているあなたと。今更だからこそ。ハグがしたい。

11/8/2023, 3:15:32 PM