命が燃え尽きるまで
「今度こそお前の息の根を止める」
そう言って血を吐きながら倒れ命を終わらせたのは何度目だろうか。玉座の間を汚した勇者をヒョイと持ち上げ窓から放り投げながらそんなことを考える。なぜかは分からないが何度殺しても生き返り妾を倒しにくる。今回は女だったが性別も容姿もその時によって違う。なんとも摩訶不思議な話だ。
勇者一族に伝わる不可思議な能力の一つなのだろうか。
パチンと指を鳴らし血痕と刻まれた絨毯を修復し玉座に座る。
そもそも、待つ必要はないのだ。生まれた瞬間に殺してしまえばいい。ただ、それをするのは古の呪いを受けることになる。はるか昔に初代勇者と呪いで縛りあった約束。勇者、魔王どちらかが生まれてもすぐにその命を奪ってはならない。単純だが中々煩わしい約束を交わしてしまったものだ。ふう、とため息を吐き側に控えていた側近を呼ぶ。
「はい魔王様」
「初代はまっこと面倒な約束を取り付けたものだな?」
初代の魔王の時代から側近を務める彼にそう言えばにこりと微笑む。
「それが世界のバランスを保つことですから」
「勇者が魔物を殺し、魔王が人間を殺す、か……」
「はい」
「神とやらも面倒な役割を与えたものだ」
この世界の神が与えた役目はなんとも面倒でつまらないものだ。だが、そう決められてしまっている以上その役割をやるしかないのだ。まあ勿論、そう易々と殺されるわけにはいかぬわけだが。
「少し眠る」
「はい、当代様」
また何十年後かに勇者が現れどちらかの命が燃え尽きるまで戦うことになるのだろう。ふふ、と笑いながら瞼を下すのだった。
9/14/2024, 10:34:41 PM