向かい合わせ
青いワンピースを着て、頭には麦わら帽子を被ってはある所に向かう。年に一度、必ず向かうところ。
「今日はいい天気だ〜」
桔梗の花が当たり一面に咲いている。
今年はこの花なんだね。
「今年は白いテーブルに白いチェア…センスいいねぇ。あ!私の好きな紅茶だ」
この紅茶飲んでみたかったんだよね。欲を言えば、お菓子も食べたかった。買ってきてくれないかなぁ…そんな事を考えながら、チェアに座り花畑を眺めていると後ろから懐かしい声が聞こえた。
「久しぶりだな」
「jnpi!!…柄悪」
「うるせぇよ」
着崩した黒いスーツ姿にサングラスって…ガラ悪いなぁ…。
「相変わらず警i官には見えないね」
「うるせぇよ」
「痛っ!!暴力反対!!」
「暴力じゃねぇよ。教育的指導」
「うぅうぅ」
「唸るなよ」
jnpiはテーブルを挟んだ前の席に座っては、こちらを見て笑っている。そして、「可愛い顔が台無しだから、さっさと機嫌を直せよ」と言って頭を撫でた。もう、誰のせいで怒ってると思ってるのよ
「あ、jnpiこの紅茶ありがとうね」
「気に入ってくれたか?」
「うん。我儘を言えば後でチョコレートケーキ食べたい!!」
「あー…冷蔵庫に入れっぱなしだったな。後で出すわ」
「やった♪楽しみにしてるね」
「おう」
花の甘い匂いが香る中でお互いに最近起こったことを話した。jnpiは、新しいパートナーのstuさんの事や、新しく後輩になったtkgさんの事を話している。なんでも、二人はお互いに気が合うくせにいつまで経っても付き合わなくて焦ったいとか言ってる。
「全く。さっさと告っちまえばいいのによ」
「それ…jnpiが言うの?」
「……」
バツが悪そうにあさっての方向を向いている。彼の頬をムニムニと摘むとジロリと睨まれる。怖くないよ。
「私達もお互いに惹かれあってたのに、素直にならなかったからね。まぁ、最終的に私が先にjnpiに告ったからねぇ〜」
「…お前の場合は言い逃げしたじゃねぇか」
「だってー」
「俺はお前にもっと、いろんな事を言いたかった。もっと好きだって言いたかったよ」
「jnpi…」
「…俺は今でも、お前が好きだ。この想いは変わらない」
真っ直ぐな眼差しで、そんなこと言わないでよ。
もう少しだけ、ほんの少しだけ、ここにいたいって思っちゃうじゃん。
「私は幸せになって欲しいんだけど…」
「お前を思うことが俺の幸せなんだよ。何度も言わせんな」
「もう…何遍言っても頑固だよね」
「諦めが悪いんでな。お前も知ってるだろ」
jnpiは私の頬に手を伸ばしては、優しく撫でた。
あったかいなあ…大好きなjnpiの手だ。
「うん。知ってるよ」
目を瞑ってjnpiの温もりを感じる。もう少しだけ居たかったけど…残念ならが時間だ。
「jnpi、そろそろ時間だよ」
そう告げると一瞬だけ悲しい表情をしたと思ったら、jnpiは目を閉じていつものように笑顔になってくれた。
ありがとう
「来年も…来てくれるか?」
「うん。あ、来年はケーキ忘れないでね」
「おう」
「体に気をつけてね。あと、煙草の吸い過ぎも駄目だからね」
「…」
「jnpi?」
「分かった。気を付ける」
「よろしい」
満面の笑みを浮かべて私は、jnpiの額にキスを落としてた。
*•*•*・*•*•*・*•*•*
カーテンから差し込む光の眩しさで目を顰める。
もう少しだけ、一緒にいてくれてもいいだろうに…
気だるい体を起こしてはリビングに向かう。いつもだったら洗面台に行くんだが、今日は顔を洗うより先にやる事がある。
「約束のチョコレートケーキだ。出してなくて悪かったな」
桔梗の花瓶を少し動かしてはケーキを隣に置く。
顔洗ったら新しい紅茶も淹れるから待ってろ。
「来年は口にキスをしてくれよな」
笑顔を浮かべている写真に言うも返事はない。
また、来年逢おうな
8/25/2024, 11:47:33 AM