白雲峠で
白髪の少女は上を見上げ
ただ雪を待つ。
そんなに待っても、
バスは来ませんよ。
糸目の少年が言った。
ふと横を見ると
錆びたバス停がある。
バスを待ってると思われたのか、
少年は少女にどこに行きたいのか尋ねた。
ボク、知らせに行こうと思っていたんだ。
ちょうどいい。
近くの村へ案内してくれないかな?
少年は頷き
少女を連れて行った。
村についてすぐ
少女は村長に会わせろと言った。
今それどころじゃない、
村人が1人オオカミに食われたんだ。
すぐ近くにいた人がそう言った直後、
村長は村の中心の台に立ち、
直ちに影響はないようです。
オオカミではなくクマが出たんでしょう。
ここら辺にオオカミなんていませんからね。
村人たちは歓声をあげた。
だが少女は
甘いね、偉い人。
すぐに取り押さえられた。
まさかの少年も。
この村では村長に軽口を叩くと
牢屋に入れられるらしい。
大人しくしてたら3日で出られるそうですよ。
少年は少し呆れた声で呟いた。
すると少女は息を思いっきり吸い込み
オオカミがくるよー。
と叫んだ。
見張りの村人は嘲笑した。
嘘つけ、さっき村長も言ってただろ。
ここら辺にオオカミなんかいないし
もっと違うやつが食ったって。
こう言われることはわかっていた。
しかし隣を見ると
ねぇ、ボクが白髪なの
皆笑うのに
なんでキミは今泣いてるの?
キョトンとした顔で少年の方を見る少女。
3秒経ってようやく少年は
自分の目から溢れる涙に気がついた。
わ。なんでだろう。
その少年の声に被るように
少女はまた叫んだ。
オオカミがくるよー。
食べられちゃうぞー。
羊もボクもキミも村も。
今度は嘲笑する声は聞こえず、
空間が切り取られたように
少し離れたところが無くなっていた。
あーあ。
言わんこっちゃない。
少女は既に鉄の首輪を破壊して自由になっていた。
少年もすぐ少女に助けてもらい、
外で辺りを見渡した。
遠くの方で白く大きなオオカミが
走り去っていくのを見て
本当に食べたんだと
少年は驚いた。
少女が振り返った頃には
少年は急にどこかに行ってしまった。
これだから無自覚系ネブラスオオカミは。
少女は少年の後を追った。
ネブラスオオカミには
いくつか種類がある。
1000mの巨体のやつもいれば、
小柄だが化けれるやつ、
無意識に仲間を呼ぶやつもいる。
ネブラスオオカミの7割は凶暴。
2割は自我はあるが無自覚。
1割は自我があり、
オオカミであることを自覚している。
無自覚のやつは
自分が人間や他の動物だと信じてる。
その中には仲間を呼ぶやつが紛れていて
他の動物を巻き込むので
ちゃんと教えて
1割に入れなければならない。
"Good Midnight!"
こんな馬鹿げた哀れなオオカミなど
いなくなった方がマシだとボクは思うけど
偉い人は甘いからね。
共存できる道をずっと作ろうとしてるんだ。
少女は綺麗な白い毛をなびかせながら
雪の上を走り
少年に追いつこうとした。
12/15/2024, 2:39:14 PM