小林 薫子

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あー、お腹痛い……。

 目を閉じてじっと我慢していると、旦那が声をかけてきた。
「おーい薫ー。ユンケルどこー?」

 自分で取れよ。あんたの方が背が高いじゃねーか!

 …という言葉をぎりぎり飲み込んで
「救急箱の中に入ってるー!いちばん上の左から二番目の棚ー!」
 と声を張り上げた。
 私は取りませんよという含みをこめた、最大限の文学的抵抗を試みた。

「おーサンキュー」

どうやら通じたようだった。ガサゴソとあさっているような音がしたので、

ちゃんと元に戻せよ!

…という言葉をぎりぎり飲み込んでいると、背後から「はい」と声が近くなった。

 振り返ると、そこにはプリンと、バファリンと、伊右衛門があった。
 
「薬飲んだのか?」
と旦那が澄ましたような顔で言った。

 ――あれ、なんで救急箱どこ?じゃなくて、ユンケルどこって聴いたんだろう?


 …少しお腹の痛みが和らいだ。
 
 

5/3/2026, 2:10:46 AM