Frieden

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「フラワー」「遠い約束」(4/7、4/8)

まとめて2日分です!わぁ:(_;´꒳`;):_

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「フラワー」

「ニンゲンしゃん!はる だねー!」「うん、ずいぶんあったかくなったね。」「いぱーいおはな、きれいなのー!」

ほんの一週間前と比べても、桜やチューリップなんかがたくさん咲いて、街が春らしく彩られてる。毎年のことだけど、春って悪くないな。

「ね、ね、ニンゲンしゃん。」「ん?」「ふらわ?ってなに?」「フラワー?「花」を意味する外国の言葉だよ。」「ふーん。」「急にどうしたの?」「てれびでみたー!」「へー。」

「ボク、おはなみにいきたい!」「また今度ね。今日は今から買い物だ。」「むー!こんど て いちゅなのー?!」「明日にでも行こうか。」「わかったー!きょうはおかいもの、ね!」

小さな機械を連れて買い物に出る。少しひんやりした春風が心地いい。

「きょうは、なに かうのー?」「朝ごはん用の食パンと、なくなりかけの醤油と、それから……。」「ほちょけーきみっくちゅも かお!」「え?いいよ。」「やたー!」

スーパーに着いた。夕方だから、結構ひとがたくさんいる。
おちび、迷子になるなよー?

「ぱん、あるよー!」「お、10%offだ。ラッキー。」「あとは……「ほちょけーきみっくちゅ!」「かう!ねー!」「はいはい。」ホットケーキミックスはここにはない。探さないと。

……さて、この辺かー?

「ねねー!ニンゲンしゃん!」「なになに?」「これ!ふらわー て、かいてあるのー!」「本当だね。」「これほかほかにちたら、おはないぱーいになる?」「?」

「ふらわーのこなこな、あったかくちたら、おはないぱーいさくのー?」「いや、ならないよ……。」「えー!なんでー!」

「フラワーはフラワーでも、これは小麦粉。パンや麺類、お菓子の材料になるものだからね。」「へー!」

「お花は種か球根を植えたらきっと咲くよ。」「たね、ほちい!」「また今度、ホームセンターに行ってみようか。」「んー!」

嬉しそうに笑いながら、自分の少し前を歩く無邪気な機械の背中を見つめて、なんだか自分まで楽しくなってきた気がした。
……なんの花の種を買おうかな。

なんてことを考えつつ、自分たちは家に帰った。
楽しみが増えるっていうのはいいことだ。と思ったと同時に、醤油を買い忘れたことも思い出した。面倒事もひとつ増えたな。

「ニンゲンしゃん、ほちょけーきもちゅくってねー?」
「ホットケーキは、明日の朝ごはんにしようね。」「ん!」

さてと、そろそろ晩ごはんの時間か。
「おちび、ごはん作るから待っててね。」「おてちゅだいちたい!」「ありがとう。それじゃ……。」

今日もなんの変哲もない、ふつうの時間が過ぎていく。
明日もきっと、そうだといいな。

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「遠い約束」

僕は凡才。

君は天才。

僕よりもずっと後から始めたのに、君は僕をあっという間に追い抜いて行った。連なる高山も、広がる海も、君は軽々と飛び越えていく。僕は小さな水たまりすら飛び越えられない。

はじめて会ったときに交わした、一緒にてっぺんにいこうという約束も、今や遠くへと飛ばされて、どこかへと行ってしまった。

太陽のように輝く舞台上の君を、僕は冷たい海底のような客席から見上げる。

目が合った。
明るく微笑んでみせる君。
作り笑いを浮かべる僕。

その時から、僕の心は劣等感で泥泥に固まってしまった。

どれだけ努力したとしても、月は太陽になれない。
どれだけ背伸びをしたとしても、野草は大輪の花を咲かせない。
結局、持って生まれたものがすべてなんだ。

そうして、君との約束を果たすこともなく、僕は舞台から降りた。

4/9/2025, 3:05:43 PM