【寂しさ】
深夜に帰ってきた同居人からは、アルコールの匂いがした。香りだけで酔いそうになる濃厚さからは、そうとうな深酒をしたのだろうと容易に予測できる。案の定、真っ赤な顔でニコニコと笑っていた同居人は、俺の姿を見たとたんに表情の一切を消し去った。
「おかえり」
「……うん、ただいま」
廊下に座り込んだだぼんやりとした横顔は、俺ではないどこか虚空を眺めている。立ち上がらせてやろうと手を差し伸べれば、何を思ったかするりと熱い頬を寄せられた。
大勢の人間に囲まれて、アルコールを煽って、馬鹿みたいに騒いだところで、おまえの抱える寂しさが埋まるわけがないのに。
それでもほんのひとときの享楽に耽らずにはいられないおまえの愚かさが、愛おしくてたまらなかった。
12/19/2023, 9:51:08 PM