ちひろ

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時を告げる 

教室はもうすでにざわついていて入りにくい。唯一の親友ともクラスは離れてしまい、私の緊張は極限まで達していた。
勇気を絞って教室に入り、自分の席を確認する。なるべく緊張がバレないように動揺を隠すことだけを考えていた。やっとのことで席に座るが、緊張で周りを見ることは出来ない。今日の提出物や予定表を見て時間を潰すことにした。
5分ほど後に肩くらいの髪の子が隣に座ったのが分かった。でも目線を隣に向けたり、話しかける勇気はなく、気になる気持ちを抑えて担任を待った。

入学式を終え、自己紹介をして分かったのは、隣の子は私よりも暗そうだということだ。細いメガネがよりその雰囲気を作っている。でも悪い子ではなさそうだったので、授業が終わった後話しかけてみた。私は初対面の場合、変な勇気が出て話しかけてしまう癖がある。だから明日には多分挙動不審になってしまうが、しょうがない。

「あの、高橋です。これからよろしくお願いします。」
なるべく明るく話すが、緊張で早口になり意味はなかった。
「あ、うん、よろしくお願いします」
軽くお辞儀される。  
これは自分の挨拶が悪いわと思いながら、
「じゃあ、また明日」
と恥ずかしさのあまりそそくさと教室を出た。

暗いけど、雰囲気が柔らかくて、髪がサラサラで、名前が可愛い女の子。(あと、そのうち知るのだがこの子の笑顔はとびきり可愛かった。)
この先仲良くなれるかな、明日どんな話しよう。
緊張と恥ずかしさと期待と不安で心臓はバクバク音を立てている。その音がこれからの始まりを告げているような気がした。

9/6/2024, 4:56:45 PM