私の人生の中で
1番記憶に残っているのは
やっぱり
この左の手首を叩き切ったことだろうか…
それまでは恋人に裏切られた瞬間が
1番記憶に残っていたけど
時間が経った今では
もう小さな出来事でしかない。
だけど
あの時はしんどくて
絶望の中を生きていた。
今思えばあんなこと
よくできたなと思う。
絶望の中を生きていた私は
存在自体が不要だと
恋人に否定された。
生きることが罪に思えたあのとき
私は自分の手首目がけて
包丁を振り下ろした。
空中で当たった腕が
反動で弾き飛ばされる。
手首には紅い一筋の線。
包丁で叩いても叩いても
なかなか血は出なくて
“あぁ、左腕も包丁に向かわせればいいんだ”
そう思って包丁を振り下ろすのと同時に
左腕も吸い寄せられるように
包丁とぶつかり合った瞬間
左手首からは
噴水のように紅い血が噴き出した。
“もう生きなくていいんだ”
“もう何も考えなくていい”
あの時はそんな感情だった。
左手首からは
温かい水に触れているような感覚が伝わってくる。
痛いという感覚はなくて
なんだか熱いような…
手首には力が入らなくて
ダラリとぶら下がっているだけ。
後に知ったけれど
動脈はもちろん
神経も手首の腱も全て切れていたらしい。
手が動かないわけだ。
でも今は
しっかり指も動かせている。
多少しびれは残っているけれど…。
私はこの手首の傷を見るたびに
あの日のことを思い出す。
あの瞬間が
フラッシュバックすることもある。
文字通り
脳裏に焼きついて
一生忘れないと思う。
でも不思議と
後悔はしていない。
あの出来事を経験したから
今の自分があるんだろう。
過去は所詮過去にしか過ぎなくて
今は心穏やかに
幸せに過ごしている。
これからはこの幸せで
過去を上書きできるように
今を生きていく。
#脳裏
11/9/2024, 3:56:23 PM