海老body

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未だに、覚えている。
小学校の林間学校で見た星空。
あまりに綺麗過ぎて、プラネタリウムを見ているような気分になったのを覚えている。

あれから、私も大人になった。
都会の荒波に揉まれ、社会的人間としての自我を失い、家へ帰る道すらなんだか不安気で。
似たような日々を繰り返し、私は今前へと進めているのかと毎日疑問を投げかけるが、答えがでたことは無い。
今日も今日とて、不安気な足取りでなんとか帰路につく。
「……ただいま」
靴は脱ぎ捨て、エコバックからぬるいビールを取り出し、そのまま缶を開ける。
ぬるくてもいい。ただ、リラックスしているという気分に浸りたかった。
夜風に当たりたくて、ベランダに出る。
都会のネオンはきらびやかだけれど、今もどこかの明かりのもとで誰かが残業でもしていると思うと、心が痛い。
都会のネオンなんて、明るいだけ。エモいも何も無い。
そんなとき、ふと思い出した。
「林間学校……。あ、星」
星なんて街灯で見えないから、存在すら忘れていた。
あの時は偽物にしか見えなかったけど、大人になってから見たら、感じ方も変わるだろうか。
「見に行こうかな、星」
今日は上司から嫌な仕事を押し付けられて、悔しかった。同僚から、何気に助け舟も無かったのが、悲しかった。
この日々から、抜け出したかった。


「やっぱ、偽物みたい」
プラネタリウムにしか見えなかったけど、どうしょうもなく涙が溢れて止まらなかった。

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『夜景』

4/5/2023, 2:07:06 PM