伊藤透雪

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夢を見てたい/イマジナリーな声


落ちる感覚のあとに辿り着いた森に、細い道が登り坂で緩くくねっている。
遠くから声が聞こえた気がして、目を細めて道の先を望むと、大樹が両翼を広げて、遠くから呼んでいる声が届いた。

ーヤ、ヤット、ト、キタカ。
ーサ、サアア、コチラ、ラ、ニ

カサ、と足元の草の音。呼ばれるままに一歩一歩進むうちに樹の根本が見えてきた。
森から開けた大地に広く根を張る樹から、空に向かって放たれる光が見える。
惹かれるように駆け出した私は、思い出した。遠い昔に出会っていた存在、懐かしい気配を纏っている存在を。

意識の中に表れ、話す相手の姿。
兄のような、いつも側に感じた存在と時々話していた幼い日の、遠い記憶が掘り起こされる。
辿り着いた幹に触れ、何度も撫でた。
あなたは居たのね。本当に居たのね。
涙が落ちた、愛おしいという感情に近い、思いが溢れ、


タイマーの音色が聞こえた。
私は軽い頭痛と目眩を感じて、
鳴っているメロディをオフにした。
触れるスマホの固さが、夢だと告げた。
私の頬を涙が流れていた。

このまま見ていたかった。
時間を超えてやっと見つけた便りが、消えてしまった。
何故今朝なのかは分からないけれど、温かいぬくもりに触れていた幸せが、夢の中で泡が膨らむように表れたのを、離すのが辛くて、少しだけぼんやりしたあと、
諦めて起き上がった。


今日は水曜日、まだ平日だから出る支度しなくちゃ。

1/14/2026, 8:06:07 AM