蝉助

Open App

「犬?」
「ちがう。」
「壺?」
「ううん。」
「……つばが異様に小さい麦わら帽子?」
「ちがうよ!」
レイチェルはジルが見せた紙一枚とにらめっこしていた。
事の発端は単純で、彼が絵を描いたというのだが、それはなんだか不安を煽るような奇怪な形をして、何を表しているのかが分からない。
数個ダメ元で尋ねてみたがやはり当たらない。
「そんなに分からないかなぁ。」
ジルは不貞腐れるようにして唇を尖らせた。
「星座を見ている気分。頼りない点同士をどうにか繋げて何かを見出そうとする感じ。」
「心外だなぁ!」
「お前の絵心そんなもんだよ。」
そうしてレイチェルはもう一度そのへんてこな一枚絵に視線を移した。
大まかな形で言えば卵型のそれ。
しかし上部分にはおぼつかない線でぐるぐると塗りつぶされており、先がやや尖った卵の中には何か滑稽な模様は加えられていた。
それを形容できる語彙をレイチェルは持ち合わせておらず、ただ『変』として片付ける以外の方法が思い付かない。
「で、結局これなに?」
「チェルだよ!」

10/5/2024, 11:43:04 AM