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「ごちそうさまでした」
食事を終え、お会計に行こうと腰を上げると
「俺が払うから」
一緒に食事していた同僚が財布片手に
「あ、ちょっと」
呼び止めるのも聞かず、さっさと行ってしまう。
一旦払ってもらって、外に出たら自分で食べた分の料金を支払おう。そう決めて、私は店を後にした。

「一緒に払ってくれて、ありがとう」
会計を済ませ、外に出てきた彼に、まずはお礼を伝える。
「どういたしまして」
笑顔を見せる彼に
「私の分ね」
お金を差し出すと
「いや、いいよ。最初から俺が出そうと思ってたし」
と言われ、受け取ってもらえない。
「どうして、最初から出そうと思ったの?」
お金を持ったまま、聞いてみると
「だって、ランチに行こう。って誘ったのは俺だし」
という答えが返ってくる。
「じゃあ、次は私が誘うから、お金出させてくれる?」
それなら、受け取ってもらえなくてもいいかな。と思ったけれど
「いや、そんな、奢ってもらうなんて」
と、断られる。
「なら、お金、受け取ってくれない?」
再度、お金を差し出すと
「いや、でも…」
と歯切れが悪い。
「ダメなの?」
彼の目をじっと見つめると
「ごめん、俺、キミにいいとこ見せたかったんだ」
目を逸らし、ポツリとつぶやく。
「え?」
「キミのこと気になってて、一緒にランチに行けたらいいな。って、声かけたらオッケーしてくれて。オッケーしてもらえて嬉しくて、いいとこ見せれば、もっと仲良くなれるかなって」
彼の言葉に驚きつつも
「そっか。話してくれてありがとう。私もあなたのこと、いいな。って思ってたから、誘われて嬉しかったよ。でもね、私にとっては、お金を出してくれることが、いいところ。にはならないから、意味がないことなの」
本音を伝えると
「そうなの?」
彼は不思議そうにする。
「ご馳走してもらえるのが嬉しい。って人もいるだろうけど、私はあなたと対等でいたい。こんな私でも良ければ、またランチに行ってくれませんか?」
そう聞くと
「うん、また一緒に行こう」
彼はお金を受け取り、微笑んでくれたのでした。

11/9/2024, 6:15:44 AM