もしも過去へと行けるなら
「多くはおそらくこう答えるだろう。『あの過ちを、悲劇を、回避する』。しかし、『過ち』をなかったことにすれば、その時の教訓や感情をも知らなかったことになるだろう。それは、どんなにつらくとも悲しくとも、根本的な解決とはいえない。我々は今を生きるしかないのだから」
珍しく真面目くさって教師らしい言を述べる黒髪の男の目の前には、男自身が勢い余って凍らせてしまった吊り橋があった。
そんな男を半目で睨みつけ、白髪の男は言う。
「ご高説どーも。……で? どうやって向こう側に渡るつもりだ?」
7/24/2025, 11:20:22 PM