コハク

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t「やさしくしないで」

君は最後まで優しかった…。

君が亡くなった。病気でも事故でもない、所謂寿命で。
お互いに悔いのない人生だったね、と笑い合いながら。
それでも先に旅立たれるのは悲しくて泣いてしまった。
君は泣きながら笑う僕を見て、ありがとうと言ってくれた。
久しぶりに聞いたその言葉にやっぱり泣いた。
普段から君は周りに対して厳しい言動が多いけれど
それは君自身に対して厳しい事を知っているし
認めた人にしかその態度を取らないのも知っている。
だから君が周りから不遜な態度と言われても一緒にいた。
大好きな君だから不器用な君もまた君の一部だから。
君が亡くなり遺品整理のため君の部屋に踏み入る。
普段から綺麗好きな君は部屋も綺麗だ。
本棚には二人の思い出のアルバムが綺麗に並べられている。
そしてテーブルには二人並んで撮った写真が置いてある。
こおゆう所が可愛いなって思ってしまう。
一つ一つ整理しながら思い出に浸る。
テーブルの引き出しを開けると見慣れない手紙が一枚。
取り出すと君の字で自分宛のようだった。
中身を取り出し読み上げる。
…最後まで君って奴は自分の事を考えてくれてたのか。
君の手紙に涙が出る。やさしくないでくれよ。
いつもみたいに馬鹿って言ってくれよ、こんなのズルいよ。
ほらねやっぱり君は不器用だ。でもありがとう。
自分も最後まで生きるよ、そしたら君は迎えに来てくれるかな。

2/3/2025, 9:41:46 PM