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朝日の温もり


アラームの2,000Hzの音が不快に鳴り響いて、昨日の夜のまま時を止めていた部屋を震わせる。

瞼を開けようとしたら失敗して、眉間に顔のパーツを集めるだけになってしまった。

-睫毛が凍って下睫毛と上睫毛が固まってしまったのかしら? 

何度か目を開けようとしては失敗し、結局諦めて知らずに込めていた全身の力を抜く。

ゆっくりと息を吸って、細く、長く吐いていく。1日の英気を養うみたいに。たいせつに。

つん、と張り詰めた冬の空気。鼻から深く息を吸い込むと鼻の粘膜がぎゅうと引き攣る。英気と言うには乱暴すぎる刺激だ。

「さっぶい…かっぷすーぷ、飲みたいな。」

こうなって仕舞えば、食欲に抗えはしない。
目も開けられないまま、むくりと身体を起こして、伸びをする。

ばきばきと寒さで固まってしまった背骨の悲鳴が漏れる。
首まで回してようやく、目が開いた。
ここであくびをひとつ。
目頭の目脂を拭いて、髪を整えて、意味もなく部屋を見渡す。

部屋の角のアイビーが不満気にこちらを見つめている,
『私にも栄養よこしなさいよ。』とでも言いたげな様子だ。

仕方なく布団から出て、カーテンを開け放つ。
白薔薇のドライフラワーに、キャンドル、ルノワールの画集や、
オルゴール。私のお気に入りを集めた出窓のレースカーテンの隙間から差し込んだ朝の陽光が顔に当たって、私の一日の始まりを控えめに祝ってくれる。

さっきまで冷たく感じた空気が、今少し、朝日に暖められて温もりを帯びた気がした。

「今朝は贅沢野菜のミネストローネにしよう。」

6/10/2024, 3:49:06 PM