恋物語
「お前恋愛小説って好き?」
「…急に何?」
俺って語彙力ないのかなぁなんて思いながら突拍子もない事を聞く。何がどうしたら急にこんな事聞こうと思うんだよ
「いや、ほらお前図書委員じゃん?色んな本のレパートリー網羅してるのかなと」
「図書委員って言っても委員会だからね所詮。俺はそんなの読まないよ」
「好きな人とかいないの?そういう時こういうの参考に〜とかなんないの?」
「なんで好きな人いる前提で話進められてるんだろ…そもそもいないし、好きな人とか。」
アイツはだから急に恋愛小説の事聞いてきたのか、と納得している様子。そんな事よりも俺は好きな人がいない、という言葉に安堵する。まだ付け入る隙はあるという事か。
「…へへ、いないのか。好きな人」
「えっ笑い方きもちわるっ…」
「酷くね??」
「酷くねぇよ…思った事そのまま言っただけだし…」
それが酷いんだよ、と言う前にアイツの言葉が過ぎる。
「…お前は?いないの、好きな人。」
先程まで合っていた目を逸らし、本に視線を向ける。この話題の流れでそんな事されると、どうにも期待してしまうものではないだろうか。心做しか顔が少し赤いような気もする。
「俺?俺はなぁ…」
仮に俺の勘違いだったとしてもどうだっていい。なんとしてでも“トモダチ”という関係から進んでみせる。
(…「恋物語」で終わらせる程、可愛い男じゃないんでね。)
5/18/2024, 11:56:26 AM