小絲さなこ

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「儚く美しいこの世界に君を残して」


入道雲と鱗雲。
行ったり来たりを繰り返すように、少しずつ変わっていく空。
桜の葉やハナミズキの葉が、一足早く色を変えていく。

「急に冷えてきたね」

残り少なくなってきたカレンダーに印をつけながら君が呟く。

その印をつけた日が来る頃には、僕はここにはいない。
君もわかっているはずなのに。
それを感じさせないように君は振る舞う。


ずっとずっと側にいられたらいいのに。

それは、絶対に叶うことのない願い。


「どうか僕のことを忘れて。いつか他の誰かと幸せになってほしい」

 
心にも無い綺麗事を並べる。
罪を償うのは、僕ひとりでいいはずだ。 
この儚く美しい世界に君を残していくことは、最大の罰。
赦してほしいなど、決して言えない。 
だから、君が僕を恨む日が来るように祈ってる。
誰かと幸せになる日が来ても、僕のことを忘れないように。
 
僕がこんなことを思っているなんて君が知ったら、さすがに軽蔑するだろう。
それでいい。
それでいいはずなんだ。

 
「見守っていてね。私頑張るから」
 
頷くことしか出来ない僕を、君は抱きしめる。

 
────秋🍁

 2024.09.26.

9/27/2024, 2:34:54 AM