遠く....
「ねぇ純(ジュン)ちゃん」
鼓膜をくすぐる甘い声。
「またね」
いつも君はそうだ。
いつも帰り際に、僕の身に猫のように擦り寄ってきては<またね>と言う。
幼稚園からの幼なじみの僕らは、僕が引っ越してからも冬休みには故郷に帰るため必ず会っていた。
中学二年生の時。
僕たちは付き合い始めた。
それからは、「冬だけの恋人」として共にしてきた。
それから10年後。
やっと僕の収入が安定し、一緒に暮らそうと話を進めていた頃。
その年の冬、また別れの時が来た。
しかし、その日はいつもと少し違った。
少し困ったように眉を下げ、
無理やり笑みを作った君。
僕がいつも通り「またね」を言おうと口を開くと、彼女は半ば無理矢理に僕の頬を押さえ、口付けをしてきた。
今まで彼女を大切にしすぎて手を繋ぐことすらしてこなかった僕は、彼女のその行動に戸惑いつつも、それなりにそういう欲はあったため、大人しく受け身でいた。
しばらく見つめ合った後、彼女はようやく口を開いた。
「さようなら」
2/8/2025, 10:31:06 AM