よあけ。

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:「ごめんね」



首と胴を自力でくっつけるのには苦労したよ!
あと四肢もばらばらで大変だった。
でもなかなか楽しい作業だったよ!
頑張ったおかげですっかり元通りだし。

体の調子はどう?悪くなってないといいな。

血液より愛を込めて。



今観ている君は模倣品だ/君の思考に触れ形をなぞり噛み締め味わったとて、それは既に偽物なのだ/本物の味が知りたい/君だって同じ気持ちを抱えている/それだけが救いだ/

食人、とは何とも魅惑的だ/僕のこれは食してしまいたい衝動に駆られるほどその人を味わい尽くしたいという現れだろう/その人を理解したくなったとき僕は無性にその人を食してしまいたくなる/クールー病になり死に至る点を考慮すると互いに切り落として互いに食べてしまうのが良いかもしれない/そしてできれば一緒に味の感想を言い合いながら死んでしまおう/

二人歩いた水辺をやたら低い目線でもう一度歩く/歩いた跡は波と砂にゆっくりと呑まれてゆく/歩いた跡は消え、忘れられ、最初から無かったかのようだ/記憶も平らになり色褪せ、追体験しながら重ねて観たものは既に創作となる/

君はどこへ行ってしまったのだろう/君からの「ごめんね」の手紙を何度も読み返してもうクシャクシャだ/逃げてしまったのだろうか/死んでしまったのだろうか/どこを探しても見つからない/

あの日は月がきれいで「月を見よう」なんて名目で海辺まで連れられて月を見に行った/月明かりできらきら輝く水面と、染みのついた砂浜/潮の匂いと鉄の匂いが強かったのを覚えている/手を繋いで家に帰った/君の手のひらは冷たいのに生温かくてやけに温度差があった/

砂浜に座り込んで、こうやって月を眺めていた/こうやって/

あ/

嗚呼、なんだ、死んでしまったのは僕だったようだ/

僕は家に帰ることなく、あの場所で掻っ切られた/君は海で処理をした後、家に持ち帰って僕を食べてしまうのだろう/「ごめん、ごめんね」と言いながらバクバク食すのだ/手紙の「ごめんね」はそういうことだろう?/嗚呼、ごめんね、こんなことで僕は怒ったりしないのに/本当のところ、やはりお互いの気持ちなんて通じていなかったのかもしれない/

それでも、君の血となれることがこんなにも嬉しい/

5/29/2024, 5:21:12 PM