お題:ススキ
ススキは背が高かった。
遠足の自由時間のとき、辺り一面ススキが生えている場所へ、わ〜〜っと入っていった。自分よりも背の高い植物は木かひまわりくらいしか知らなかったから、新鮮で夢中になって走った。
ざわざわ、ざわざわ。
風が吹けばススキは音を立てて大きな影を作った。
ざわざわ、ざわざわ。
だんだん、話し声に聞こえてきた。
ざわざわざわざわ。
気がつくと、帰り道が分からなくなっていた。焦り、無我夢中で走った。かき分けてもかき分けても背の高いススキばかり。
ざわざわざわざわ。
ススキの声が恐ろしくて脈が早くなり、血の気が引いた。逃げるように走った。走って走って走って、走った。
ざわざわざわざわ。
「みーっけ! あれ、泣いてるの、どうしたの?」
腕を掴んでくれたのは同じクラスの子だった。帰り道が分からなくて怖かったことを伝えると
「かえりみち? あっちだよ。ここから見えてるよ」
あっちと指が向けられた方へ顔を上げた。
なんと、さっきまで辺り一面にあったはずの背の高いススキが、自分より背が低くなっていた。
さっきまで確かに背が高かったはずなのに。
11/10/2023, 5:07:08 PM