鳴海ちひろ

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追い風

「なんか、上手く生きられないんだ」
はじめからそうだった訳ではないはず。
ちょっと怒りがちな父と
たくさんの薬を飲まなければやっていけない
どこかおかしい母が居て。
かわいい弟と、友達みたいな妹。
嫌われ者のおばあちゃんと、一緒に生きてきた。

子どもで居られる時間は
とっくの昔に過ぎているのに
いつまで経っても大人になれない。
まともな稼ぎがなければ、
それは大人とは呼べない気がして。
そんな自分に嫌気がさして。

今はもう、弟と、父と母の四人だけになった家の中。

支えてもらって生活しているこの状況が
いつまでも続くなんて思っていない。

いつか支えをなくした私は、ひとりで生きられるのか。

向かい風さえも吹かない、
停滞したこの日常がゆるせない私と
堕落しきった私は戦うことすら放棄している。

二十歳過ぎればただの人。
ただの人にもなれない私に風は吹くか。

私の背中を押すのは、いつもだれかの言葉だ。
私自身の言葉も、私の背中を押す。
ならばそれはきっと、追い風だから。

上手に生きなくてもいい。

ただゆるやかに、かろやかに、
風にのって、その日をやりすごそう。

1/7/2025, 6:07:31 PM