お題 『ごめんね』
※自傷をほのめかす表現あり
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私は自分が嫌いだ。
どれくらい嫌いかって言われたら、自分のこと嫌い選手権が開催されていたら堂々のトップをとれるくらい嫌いだ。
原因探しは指折り10過ぎた辺りで諦めた。
嫌なことがあれば自分に矛先を向け、傷つける日々。
最初は痛かった。
けど、痛みなんて案外すぐ慣れてしまった。
本当に痛いのは、心。
それに蓋をして、体の痛みで誤魔化しているだけ。
心も体も麻痺してしまった。
痛覚すらも今では愛おしい。
「……なんで私、生きてるのかな」
ぽつり、零した言葉は誰にも届くことなく空気に溶けていく。溶けたそばから、黒い雲となって、私の心に激しい雷雨を連れてくるのだ。
チャンネルのズレたつけっぱなしのラジオがザアザアと音を立てている。それが嫌に耳についた。
ああだめだ、これは。
経験的に、そして本能的に理解していた。
体が無意識に立ち上がる。
たしか、あそこに置いたはず。
目的のものを求めて、辺りを見渡した。
その時だった。
「………?」
微かな、違和感。
雨粒が水たまりにポタリと落ちたような。
しかし、その波紋は確かな存在感を残していく。
見慣れない、水色の背表紙。
気づけば体が吸い寄せられていた。
「こんな本、あったっけ…」
手に取ってみる。
不思議なことに、本の表紙にはなんのタイトルも書かれておらず、作者も何も、分からなかった。
「…………」
自身を傷つけようとしていたことさえ忘れ、私はその本を開いていた。
そこに書かれていたのは。
『自分を抱きしめて。そうすれば、道は開けるから』
ただ、その一言だけだった。
「……?なにこれ」
あまりの情報量の少なさに、拍子抜けする。
なに?自分を抱きしめてって。
どういうこと?
けれどその本は、それ以外の選択肢を許さないとばかりにただ、そこにあり、その言葉を主張していた。
「…………」
自分を抱きしめる、なんて。
そんなこと、したこともなかった。
なんのために?なんで?
疑問は尽きなかった。けれど、この本の言っていることは、何故か不思議な説得力があった。
私は、恐る恐る自身の体に手を回す。
そして、腕をクロスさせる形でゆっくりと体を抱きしめた。
「…………!?」
すると、みるみるうちに脳内に映像が流れ出した。
(いたい、いたい、いたい、痛い………っ!!!)
(やめて、もういやだ、やめて、っ……!!)
これは、なに……?
(いたい、痛いよ、お願い、助けてっ………!!)
ああ、これは。
私の、心の声だ。
自身を傷つけてきたこと。
苦しめてきたこと。
悲しませてきたこと。
…それら全てに対する。
私は圧倒されていた。
こんな、痛みを、自身に背負わせていたのか。
こんなにも、苦しめて来たのか。
体に触れる温かさにつられ、氷が溶けるように、心に流れ込んでくる。
目からは、自然と涙が溢れていた。
「ごめん、ごめん、ね、今まで傷つけてきて、ごめん…痛かったよね、辛かったよね、苦しかったよね…、っ、ごめん、ごめんなさい…っ…!」
気づけば、そんな言葉を紡いでいた。
私は涙が枯れるまで、ひたすらに子供のように、泣き続けていた。
……降り続けていた雨は、とっくの昔に止んでいた。
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セルフハグはいいぞ!ということを伝えたくて無理やりねじ込みました。みなさんも限界だ!って時はぜひやってみて下さいね。
5/29/2023, 8:09:45 PM