「誰もが、『皆全員』、『見ないだろうな』、『見るな』、『見るんだろうな』。パッと考えただけだと、『みんな』はこの4種類、か?」
ひらがな表記は解釈捻じ曲げの大好物。某所在住物書きはアプリからの通知画面の「みんな」を見て、首を傾けた。「全員」以外にどう読める?
「一応、中国の王朝にからめて、『ミンみたいな』も可能っちゃ可能なんだろうけど、」
まぁ、俺、世界史赤点常習犯だったし。
さすがに歴史系は書けねぇな。物書きは呟く。
「そもそも『誰もが』『明みたいな』って、どういう状況だ。春節イベントか何か……?」
個人的に一番書きやすい嘆きは「誰もが皆ダイエットだのアダルトだのの広告に寛容と思うなよ」。
広告削除オプション実装が切に待たれる。
――――――
丁度1か月前のハナシ、職場の先輩が私の愚痴に対して、言った言葉がある。
更年期の影響だと思うけど、バチクソな毒親だった私のお母さんと、久しぶりに会ってご飯食べたら、
お母さんが私の少しの親切に対して、諭吉2枚の大げさな感謝をしてきたっていう、
「大げさ過ぎてドン引きした」って愚痴への言葉だ。
誰もがナントカ、小さな火花がどうとか。
クソで毒な私のお母さんにも、実は謝罪と感謝の火花が残ってて、それをお母さんなりにカタチとして示したかった結果が、諭吉だったんじゃないかって。
サラっと聞き流してたせいで、よく覚えてない。
でも、ふと突然、先輩の言葉の全文が気になって、「誰もが 火花 名言」で検索かけてみたけど、
出てくるのは、映画化された小説の名言ばっかり。
先輩の本棚に、小説や漫画は無い。雑誌も写真集もエッセーも無い。あるのは専門書や実用書だけだ。
ダレモガヒバナの名言、元ネタは何だったんだろう。
小説でもアニメでも、芸能でもスポーツでもなくて?
「――いや、小説が出典だ」
三連休2日目。
諸事情で、本来の聖地巡礼とかイベント参加とか諸々全部キャンセルになって、完全フリーな私は、
生活費節約術として、職場の先輩のアパートでシェアランチをしてた。
「有名どころさ。お前も確実に名前は知っている」
予算5:5想定。現金なり食材なりを持ち寄って、どうせお互い一人暮らしだから、まとめて作ってシェアすれば、光熱費も水道代も材料費だって節約できる。
今日のメニューは、フリーズドライのミネストローネを流用した、ケチャップオムライスだ。
「『誰もがみんな』、」
先輩が言った。
「『なにか小さな不滅の火花を、彼等のその内に秘め持っている』。……原文は忘れた。『四つの署名』、シャーロック・ホームズのセリフだ」
私も記憶があやふやだから、誤訳もあると思う。
英文と本来の和訳は自分で確認してくれ。
先輩はそう付け足して、オムライスをぱくり。
ひとくち、胃袋におさめた。
「で、ホームズのセリフがどうしたって?」
「せんぱいが、しょーせつネタ、だした」
「まぁ、そうだな」
「マンガもしょーせつも、えーがも、ドラマもみないせんぱいが、ゲームもやらないせんぱいが」
「科学捜査の原点、先駆けになった作品だ。小学校の頃に漫画版を読んだ程度だが、ネタは知っているさ」
「先輩、組織モノとか『保全と多様性のジレンマ』とか『誰もが皆、そちら側に立つに至った背景を持つ』みたいなの、ヘキだったりしない?」
「へ?」
「先輩が好きそうなゲーム知ってるんだけど、プレイしてみない?ハードも貸すからやってみない?書籍が良いなら設定資料集あるよ、来たれ保全サイド沼」
「謹んで辞退申し上げるがひとまず落ち着け」
実は今そのゲームの二次のイベントやってて云々、
だから茶でも飲んで落ち着きなさい云々。
たとえ今守備範囲外でも、読んだのが小学校時代の昔々でも、「先輩も漫画読んでた時代があった」って事実がぐるぐる回って、今頃オンリーイベが開催されてるだろうゲームの原作布教スイッチがオン。
私のスピーチは、私のダレモガヒバナの時みたいに先輩にサラっと聞き流されちゃったとは思うけど、
そのゲームの原案作った人、原作者様が、先輩の故郷と同じ雪国出身って部分だけは、ひとつ、記憶に残してくれた、とは思う。
2/11/2024, 2:47:31 AM