川柳えむ

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「あげる!」
 咲いていたコスモスを一輪摘んで。あなたはコスモスよりも鮮やかに頬を染めて、それを手渡してくれた。
 遠い秋の日のこと。記憶は鮮明に残っている。

 あの頃のあなたはもういない。
「やるよ。女はこういうのが好きなんだろ?」
 ずっと豪華なバラの花束を、投げ捨てるように渡してくる。
 こんなバラの花束よりも、あの頃の一輪のコスモスの方が、私にはずっと価値があったのに。


『一輪のコスモス』

10/10/2025, 10:45:54 PM