満月の夜、フクロウの子が巣穴から顔を出しています。
「お母さん、あれは何?」
「あれはお月様よ。夜になると出てくるの」
「まんまるできれいね。私、お月様まで飛んで行きたいわ」と子どもは言います。
お母さんは笑って言います。「次の満月になったら、お外に出ましょうね」
数日後、ふくろうの子はまた巣穴からかな顔を出します。
「お母さん、お月様が半分になっちゃっているわ」
「そうね。お月様は形を変えるのよ」とお母さんは言います。
「私、もうお外に出ていい?」とふくろうの子はお母さんに聞きます。
お母さんは笑って言います。「次の満月になったらね」
また数日後、ふくろうの子は巣穴から顔を出します。
「お母さん、今日はお月さま出ないの?」
「もう少ししたら出ると思いますよ」とお母さん。
夜もすっかり更けた頃、細い細いお月様が出てきました。
「私、もうお外に出ていい?」とふくろうの子はお母さんに聞きます。
お母さんは笑って言います。「次の満月になったらね」
そのまた数日後、ふくろうの子は巣穴から顔を出します。
ふくろうの子は何度も何度も空を見上げます。いつまで経ってもお月様は出てきません。
「お母さん、お月様がいなくなっちゃったわ」
「そうよ、今晩はお月様はお休みなの。明日になったらまた出てくるわ」
「私、もうお外に出ていい?」とふくろうの子はお母さんに聞きます。
お母さんは笑って言います。「次の満月になったらね」
またまた数日後、ふくろうの子は巣穴から顔を出します。
空にはきれいな三日月が出ています。
「お母さん、お月様って不思議ね」と子どものふくろうは言います。
「そうね」とお母さん。
「私、もうお外に出ていい?」とふくろうの子はお母さんに聞きます。
お母さんは笑って言います。「次の満月になったらね」
それからまた数日後、ふくろうの子は巣穴から顔を出します。
「お月様、まあるくなったね。私、もうお外に出ていい?」とふくろうの子はお母さんに聞きます。
お母さんは笑って言います。
「まだ満月じゃないわ。次の満月になったらね」
それからまた数日が経ちました。ふくろうの子は巣穴から顔を出します。
空にはまんまるのお月様。
「私、もうお外に出ていい?」とふくろうの子はお母さんに聞きます。
お母さんは笑って言います。「ええ、いいですよ」
ふくろうの子はお月様に向かってまっすぐ飛び立ちました。
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お題:光と闇の狭間で
12/3/2024, 9:52:59 AM