いぐあな

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300字小説

希望の旅人

 あの子は我々のたった1つの希望だ。富んだ栄養、程よい湿度と暖かな空気に恵まれた、この場所で暮らし、繁殖していた我々に、奴等は憎悪を向けていた。そしてついに、大量の毒を撒いた。強い酸と、それを長時間とどまらせる泡。仲間が次々と死滅していく。この場所は不毛の場とかすだろう。だが……。

『あなたとあなたが宿した子達がいれば、また繁栄出来る。お願い、この場所に生きた私達の痕跡を絶やさないで……』
 私は毒の泡に呑まれて消えていく仲間達のたった1つの希望。いつかまた、以前のような生命溢れる楽園を、この場所に作る為、決意と共に今、旅立った。

「いやあ! 先月、きちんとカビ取りしたのに、また生えてるぅぅ!!」

お題「たった1つの希望」

3/2/2024, 11:07:28 AM