どうして、悲しみの色をした君の瞳を、愛せなかろう。カナリアが鳴くような囁きを君の上に落とせなかろう。永遠というものがあるのならば、教えて欲しい。
我が身は永遠である。黒の皇帝と呼ばれたこの男は、永遠の命を持っている。
それは、涼風が囁くような、夏の日の木漏れ日。
円環から逸脱した、人とはいえざる者。
それが、彼である。
黒いつややかな髪に、赤い瞳。
狩衣を羽織り、烏帽子を頭に被ったその姿は、ある種の人の上に立つという、威厳をたたえていた。
ただ、それだけのこと。
ただ、それだけの愉悦。
「お前の悲しみは俺のものだ。俺の悲しみが俺のものである限り、お前の悲しみもまた、忘れずにはおれぬだろう」
それは、愛の告白にも等しかったが、女はその強気な目で持って、つややかに笑った。
「皇帝陛下、ありあまるご好意をありがとうございます。ですが、私はそのご好意に甘んじることを、良しとしたしません。ですが、ご存知でしょうが、私の心は御心のままにあるのです」
それは、聞く限りでは、矛盾した答えに思われた。
だが、その邪智暴虐とも言える、皇帝の権威が彼女にそう答えさせたのだった。
1/14/2024, 11:37:24 AM