たやは

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「好きなくだもの?綾ぱねぇ。リンゴでしょ、イチゴでしょ、みかん、バナナ〜。みーな好き。おねぇちゃんは、何か好き?」

大きな口を開けて笑う妹。なんだかこっちまで嬉しくなる。

「私は梨かな」
「えー。おねぇちゃん、くだものきらいなの〜」

え?
あ、あー。

「梨っていう果物よ。綾知らないの?」
キョトンとしてから、急に怒りだした妹。
「知ってるもん」
プリプリしながら、私の回りをドスドスと大きな足音を立てて歩き回る。分かりやすく拗ねているのだ。

ふ、ふ、可愛い。

あるから二十年近く過ぎて、今日は妹の綾の結婚式。おめでとう。綾。あんなに可愛かった綾がウェディングドレスを着ているなんて、時の経つのは早いものだ。

お色直しをした綾が新郎とテーブルへ回って来る。

「綾、おめでとう!」
「ありがとう。お姉ちやん。それ、好きでしよ」

私の前にはデザートの梨のコンポートが置かれていた。

10/14/2025, 6:59:49 PM