鏡を見ているみたいだ、と言われたことがある。
私とあの子はきょとんって不思議に思った。そうかな?って首を傾げて、でもその仕草がぴったりと鏡写しになっていたから思わず笑ってしまう。
でも、確かに。
あの子は国語が得意で、私は数学が得意。
あの子は走るのが苦手なのに泳ぐのは上手い。
私は泳げないけれど走るのは早い方だ。
あの子は髪を茶髪に染めたショートにしていて、私は腰まで届く長い黒髪。
あの子は甘党で、私は辛いものが好き。
あの子は猫派で、私は犬派。
あの子は弟がいて、私には姉がいる。
共通点なんてほとんどないけれど、私たちは異様に似ていた。血は繋がっていない。遠い親戚でもないらしい。ただ偶然に、私とあの子の顔はそっくりだった。まるでもう一人の自分みたい。
初めて会ったときからポンポン弾む会話、何故か被る口癖。知ってる話題も同じ趣味もないのに、ただ私たちは似ていた。
「運命かな」
「必然かも」
「とびっきりのね」
「そうだね」
「次、どこいく?」
「どこにでも」
「水族館は?」
「動物園じゃなくて?」
「そっちも良いな」
「水族館も魅力的」
「どっちも行っちゃお」
「どちらも行こう」
どっちがどっちを話しているのか、とか。話が堂々巡りだよ、とか。そういうのを全部無視して、私はあの子と話す時間が好きだった。
ねえ、運命の貴女。私たちって前世では双子だったのかな。もしそうなら、来世もきっと会えるよね。貴女のことを忘れるなんて考えたくもない。会えないなんて想像できない。
ね、だからさ。
例え鏡の向こう側にいたって見つけてみせるから、どうか私のことを覚えていて。
8/18/2024, 3:37:31 PM