吾輩は猫である。名前はあんず。これでも一人前の雄である。幼少時、家主が吾輩を雌と区別がつかず名付けたものである。
あんず、と呼ぶことはだが稀である。たいがいやつらはあんと呼ぶ。どちらにしても響きが軽くて吾輩の気に入らぬ。
時々はあんちゃんと呼ぶ。やつらの兄ではないのだからあんちゃんというのもおかしな話だ。
あんのすけ、と呼ぶ者もいるしアンクルトムと呼ぶものもいれば、あんぶー、ぼくちゃん、と呼ぶ者までいる。
さて。名前とはいったいなんなのであろうか。
必要か不要かと問われれば、吾輩にはどちらでもよい、どうでもよい。としか答えられぬ。
なくて困るものでもなく、あって困るものでもない。そういうたぐいのものだ。
吾輩は猫である。名前はあんず。
むろんこの名を気に入ってなどいないが、やつらが猫なで声で名前を呼ぶものだから、猫をかぶってたまには返事でもしてやろうというものだ。
#私の名前
7/20/2022, 11:56:16 AM