笛闘紳士(てきとうしんし)

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       [まゆ 私の人生No.❓]
キッチンから漂ってくる美味しそうな匂いに、お昼寝中の私が目を覚ますと、ママはいつも晩御飯の料理をしている。機嫌が最高に良い時は鼻歌を歌っていたりする。

今まではお昼寝から意識が戻ると、体を起こしてキッチンに向かっていた。だけど最近の私は違う。ママが何か用事でキッチンから離れるのを寝たふりをして待っている。私は最近ハマっている…つまみ食いに
ママが料理を一旦やめてキッチンを離れた。(勝負の時)

つまみ食いはパパが教えてくれた。初めてパパとつまみ食いしたのは[から揚げ]だった。ママが近所の人と玄関で話している時、パパが私をキッチンに手招きして、私が行ってみると、パパが「まゆ。目を閉じて、口を大きくあけてみろ」と言ってきた。私はパパのに言われるがまま、目を閉じて口を大きく開けた。すると、パパが私の口の中に、少し小さく切った[から揚げ]を優しく入れてきた。
「から揚げだ!」その美味しさに私は笑顔になった。
その後、玄関から戻ってきたママに、パパはこっ酷く怒られていた。その様子を私は[から揚げ]を噛みながら眺めていた。その日の晩御飯の[から揚げ]は、パパのだけ私とママのより2個少なかった。

それから私は一週間に1回のつまみ食いにハマっている。
つまみ食いがママにバレて「今夜のおかず、まゆのだけ無しだからね」って怒られても、晩御飯の時になると「ママ、お腹空いてないから、まゆにあげる」って言ったり「ママ、ダイエットしてるから食べなさい」と言って、つまみ食いした私におかずをくれる。そんな優しいママの事が私は大好き。くれない時はパパが私におかずをくれる。そんなパパも大好き。

私はつまみ食いの為にキッチンへと向かう。トイレに行ったママ。私はワクワクしながら静かにキッチンへ向かった
(今日のおかずは何だろう?)私が背伸びをしてテーブルを見るとそこにあったのは[コロッケ]だった。狐色に揚がったコロッケを目にした瞬間、ヨダレが出てきた。私は静かに皿からコロッケを手に取って一口齧った。

その直後だった。
「まゆ😡」
怒気を孕んだ声に私が後ろを振り返ると、鋭い眼差しで私を見るママが立っていた。

私は一瞬ビクっとしたれけど、コロッケを手に持ったまま、何事も無かったかの様にリビングの椅子に座るとコロッケを食べ続けた。そんな私をママは
(やられた)と言いたい様な顔で見ていた。

※この物語はフィクションです。実在の人物とは一切関係ありません

鋭い眼差し 作:笛闘紳士(てきとうしんし)

10/15/2024, 12:32:52 PM