時雨 天

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神様が舞い降りて来て、こう言った




「もうこの世界は飽きたかな……」

ある日、神様が人間の地に舞い降りた。
そして、たったこの一言で、人間の世界が滅んだ。
一人残らず、とても静かな世界になった。海と大地だけ。
空気が綺麗で、水も透き通っている。
神様は地面に寝転がり、空を見上げていた。

「静かだなぁ……」

「神様が滅ぼしちゃったから、そりゃそうですよ」

「静かだなぁー」

僕の言葉は無視された。相変わらずの気まぐれちゃんだ。

「人間、好きだったんだけどなぁー」

「だったら、滅ぼさなければよかったのに」

「いいの、飽きたから」

「めちゃくちゃだなぁ」

神様の横に腰を下ろす。少し嫌そうな表情をしたが、すぐ真顔に戻った。

「めちゃくちゃでいいんだよ、だって神様だもの」

「便利ですね、神様って言葉」

「……いずれは、滅ばないといけないんだ」

しんみりそう言うと起き上がって、僕の顔を見る。

「さてと、助手くん帰ろうか」

「そうですね、帰りましょうか」

僕は立ち上がると閉まっていた翼を出す。
窮屈だったのが解放された。
神様は嬉しそうな表情で、僕の翼に触れる。

「相変わらず、綺麗な翼だね。さすが、助手くん」

「褒めても何も出ませんよ」

「天使の中でも、1番だよ、助手くんは」

褒められると嬉しい。思わず、笑みが溢れた。
しかし、喜んでいるのも束の間。神様の姿がない。
辺りを見回すと、すでに空へ飛び立っていた。
僕は慌てて後を追う。本当に気まぐれな神様だ。

7/27/2023, 1:16:33 PM