明日私の息子はこの家を出て行く。
自分のやりたいことをやり続けるために、もっと高いレベルでやるために、遠い異国の地へ旅立つのだ。
息子には小さい頃から伝えたいことがたくさんあった。
それは洋服の着方だったり、お箸の使い方であったり、あいさつの仕方だったり。
はたまた、気分が落ち込んだ時の乗り越え方だったり、思考が堂々巡りをしている時の視野の広げ方だったり。
それから、掛け算の仕方やどうして大政奉還が行われたのかだったりもした。
そしてそれ以上に、私がどれだけあなたを愛しているのかをたくさんたくさん伝えてきたつもりだ。
でも、私たち家族に悲しい出来事が起こって、私はあなたに何かを伝える力が薄れてしまった。
それどころかあなたを傷つける言葉を伝えてしまった。
そこから今まで積み上げてきたものが、愛情だったり、生き抜く知恵だったり、が根底から壊れてしまって私の言葉はあなたに伝わらなくなってしまった。
悲しく、もどかしい日々が続く中でいつのまにかあなたは、自分の力で立ち直って生き抜く力を手に入れていた。
子どもは親の想像を超える、とは昔から言われていることだけれど、実際自分の身に起こると本当に奇跡の様だと思う。
そんなあなたを誇りに思う。
そんな息子が今日旅立つ。
あんなに小さかったあなたは、自分の力で世界の様々なことを習得していた。
私があなたに伝えられることはもう何もないのだろうか。
「お母さん、あなたがいつもおかえりといってらっしゃいを言ってくれるから俺は安心してどこにでも行けるんだよ」
そうか。
私が息子に伝えられることはまだあった。
いってらっしゃいとおかえりを伝え続けるよ。
あなたがこの世界を軽やかに過ごせるよう祈りを込めて。
2/13/2024, 9:10:00 AM