「君の背中」
…えっ、本好きなの?意外。
野球部とか運動部系の部活の人って、あまり読まないイメージだったから。
「話聞いてるー?おーい」
…私もその本好き。
後半のどんでん返しに毎回驚かされるよね。
あぁー、そっちか。もちろん好きなんだけど、私はどちらかと言うと…
「はーん、なるほどね」
視界の端に友達の顔が近づいてくるのが見えて私は横に顔を向ける。
…あれ?何の話してたっけ?
私が振り向く前に友達が耳元で囁いた。
「好きなん?あの人」
…スキ?誰が誰を?
友達が見てる方向に確かに君がいるのを認識する。
私と友達は目を見合わせた。もう遅い。
「マジか」
冗談のつもりだったんだけど、というように最初少し頭をかいていた友達は私の挙動を見て面白くなったのかニヤニヤと笑い始め、「ふーん、なるほどね。あの人が」と言うように私とあの人を交互に見つめた。
そんな時、君が振り向いて私たちに近づいてきた。
「おぅ、どした?なんか顔赤いけど、大丈夫か?」
と君が私に声をかけ、私は思い切り首を縦に振る。
「えー、そうですかー?顔赤いかなぁ?」
と友達はさらにニヤニヤしながら楽しそうに言った。
「いや、赤いって。熱あるんじゃないか?」
と突然君は私の前髪をそっとかき上げて、おでこに手を当てた。
かあぁぁぁと顔が熱くなるせいで、ひんやりとした指先の感覚をより強く感じる。
…ひゃあぁぁぁ、近いよぉ。
「やっぱり熱あるよ」
そう言って君はやっと解放してくれた。
私がいくら「大丈夫だ」と言っても、君は頑なに「熱だから保健室へ行こう」と言う。
結局君に折れて一緒に保健室に行ったら、38.3の熱で早退することになった。
「やっぱり熱じゃん」
お大事に、と言って君は私の背中を見守る。
いつも私の方が君の背中を見つめているからか、君に見つめられるのは少し恥ずかしくて君のせいでまた熱が上がるのを感じた。
2/9/2025, 1:54:52 PM